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「日本製」になにを見るか・感じるか


2023.12.27

日本製にこだわる消費者や生産者は少なくありません。
かく言う私自身も日本製にこだわりを持つ消費者の人間の一人です。

 

【日本製品の流通量】

衣類の国内供給率は、2022年現在輸入浸透率から逆算した場合、1.5%とういう相当な低水準となっています。


            引用:繊研新聞社

 

皆さんのタンスの中を覗いてみれば、実感できかもしれません。
人によっては日本製の衣類が見つからない人もいると思います。
日本製以外の生産国は中国、ベトナム、バングラデシュなどアジアを中心とした各国からのものでしょうか。

このようにアパレルにおける「日本製」は絶滅危惧種となっているのが実態です。

 

【日本製のイメージ】

日本製に対するポジティブな印象はなんでしょうか?

① 縫製が綺麗
② 安心安全
③ 日本経済に貢献

さてこのイメージがどこまで正確なのか、私なりに考えてみたいと思います。

 

【縫製が綺麗】

確かに日本の縫製指導者が管理し、国内で縫製している現場に安心感はあります。
しかしこの解釈は必ずしも正しいと言えない現実があります。

縫製の完成度は、縫製士の持ち合わせた技量と経験によります(条件は他にもありますが)。
その経験という側面は、日本人であれば十数年以上、ひとつの現場に携さわることが可能です。

反面多くの現場にいる技能実習生は、長くて5年程度(現在の制度)しか日本で縫製に携われませんが、集中的に習得した技術を各々の母国に帰ってゆくことになります。
私の知る人の中にはその技術を財産に、母国で大きな縫製工場を立ち上げた方もいらっしゃいます。

また、そもそも海外の縫製現場では、日本のトップクラスの縫製技術者が指導していることも多く、その点において日本に大きなアドバンテージがあるとは、一概に言えないのが事実です。

「縫製が綺麗」である為のファクターは、実は日本国内だけ存在するものではないのです。

 

【安心安全】

この点について半分は正解で、半分は考えさせられるものがあります。

日本の法律に従って生産されているものは、概ね安全は担保されます。
日本製であっても、海外製であっても、日本の企業や事業者が流通させて販売する商品は、この法律の下にあり、多くの試験を繰り返しています。

注意が必要なのは、近年勢いをつけている、外国企業の越境ECで販売される商品です。
これらは個人輸入扱いになり、安全性について国や日本の企業は守ってくれません。
全て自己責任となるのです。

もうひとつ気がかりなのは、個人売買の商品についてです。
原料を国内手配しているケースでは、大きな問題は起こり得ないと思いますが、海外から直接、原料を手配する場合(個人輸入や代行などを利用)、潜在的にリスクが残ります。
そのような原料を使用し、国内で個人的に生産され、フリマサイトなどで販売されている製品はどうでしょうか?

「安心安全」は日本製か否かよりは、日本企業や事業所の管理下で、製造されたか否かが重要であるということです。

 

【日本経済に貢献】

問題が繊細なので、少し表現があいまいになるかもしれませんが、日本経済に貢献するには、日本国内でお金が流通するか、外貨が入ってくる必要があります。
日本で縫製に携わり、サラリーを得る縫製士の中には技能実習生も多くいます。
支払われた賃金の一部は、母国に送金されるでしょう。

また原料となる生地や糸やその他資材は、海外製のものが多く存在しています。
最終加工現場が日本の場合、日本製の原料と思われるケースもありますが、どれだけのお金が日本に落とされているかを、考慮する必要があります。

逆に海外で大規模工場を経営し、日本で納税や消費活動されているケースでは、日本製でなくとも日本に対する、経済的貢献度は高くなります。

「日本経済に貢献」は、概ね間違いではないのですが正確な把握には、非常に複雑な経済活動の分析が必要になります。

 

【私が日本製を選ぶわけ】

先の内容とやや整合性がとれないかもしれませんが、個人的な見解を述べます。

私自身は1990年代から韓国、中国沿岸部を中心とした、衣類生産現場を多く見てきました。
また同じくらい国内の縫製現場も見ています。

そして感じることは「日本人は几帳面で真面目な民族」であるということです。
国民性ということでは、昔も今もあまり変わりは無いと思います。

その民族が中心になって運営し技術者が縫製している商品であれば、大きな間違いは起きません。

特に小-中ロット(1000着以下程度)の量産品は、日本の縫製工場の得意分野だと思います。
そこには性格の異なる国民性の技能実習生がいることもありますが、日本人に囲まれて仕事をしている限り、成果物は極めて“日本的な仕上がり”になります。
経営者の理念がしっかりしている現場は、これらの点においてほぼ心配する必要はありません。

なお海外にも、日本基準のロットを縫えるラインを要している工場は存在しますが、その技術力は現時点では日本のそれにまだ及ばないと思います。

もう一つはコミュニケーションの問題です。
これは言語の問題ではなく、流通の問題です。
アパレルメーカーは海外の縫製工場に依頼する場合、多くは商社やOEMメーカーを経由します。
フィルターが一つ増えることになります。
このフィルター(商社やOEMメーカー)の生産管理担当が、超有能な人ばかりであれば良いのですが、そうとは断言できません。

一方国内縫製工場に直接発注する場合、相当な情報交換や注文が可能になるのは事実です。
この作業は「正確なモノづくり」を可能にするだけでなく、双方向の情報交換のなかで、より良い出口(成果物)の発見に繋がることがあります。

このように日本の生産現場で生産された商品を手にしたとき、私は感動を覚えることもあります。

 

【顔】

これも個人の感想ですが、特にショップ(小売り)に立っていた際に、商品を毎日見ていて感じたことです。

大国の大規模工場で縫製された商品は、その完成度の良し悪しに関わらず、みんな同じ顔に見えます。

日本のコンパクトな工場で縫製された商品は、完成度が高くて仕様に従っていても、不思議なもので個性を感じます。

不思議なものです。

当事業所のような業務を行っている人間が、本来発する言葉ではないのでしょうが、いまだ日本製には“ぬくもり”を感じるのです。

それが先に書いた“日本的な仕上がり”に他なりません。

 

Takeshi Yomo

…2023年も残すところ数日となりました。
お仕事でつながりのあった方も無かった方も、このHPを訪問して頂き、ありがとうございました。
今年はコロナ禍からの復活の一年でしたが、皆さまにおかれましては、より飛躍の2024年となりますこと、心よりお祈り申し上げます。